アーティスト・イン・レジデンス プログラム2025「CAMP」
国際芸術センター青森

アーティスト・イン・レジデンス プログラム2025「CAMP」の参加アーティストである前谷開、丹治りえ、アディ・スンドロ、アティッタヤポーン・センポーと、Pier Arts Centreの推薦によるサマンサ・クラークの5名の展覧会を開催します。
本年度はACACの施設改修工事に伴い、ACACの展示棟ではなく、青森駅に直結するJR青森駅東口ビル内の協同組合タッケン美術展示館を成果発表の場とします。青森という土地に集い、例年とは異なる状況を創造の糧にしながら、今だからこそできることを考え、新たな環境に応答しようとする5名の滞在制作の成果をぜひ見届けていただければ幸いです。
前谷開
前谷は近年、活動初期から用いてきたセルフポートレイトを発展させ、自身を被写体としながら、あるいは自身を撮るようにして、他者や環境と関わる術を探求しています。これまで各地での滞在制作に際して訪れた「半島」は、前谷曰く風景とその場所に立つ自分の位置を意識させられる場所です。青森の滞在では、津軽半島の海岸線に沿って変化する風景を辿るフィールドワークと、撮影現場を上演として構成し、複数の人を巻き込むパフォーマンスを行います。
丹治りえ
滞在先で集めた衣服や日用品を用いて、別の地域で暮らす人のクローゼットやキッチンなど、私的な空間を仮設的に再現するプロジェクトを継続してきた丹治。このプロジェクトは地域を変えて繰り返し実践することで、日常の断片が場所を越えてどのように繋がるのかを探る試みでもあります。青森では、三沢市を中心にリサーチを行い、この土地で収集したモノを使い、まったく異なる地域で暮らす人の日常風景を再構築します。災害や戦争によって日常が突如として変わり得る現代において、「日常」は土地を越えて交換可能なのか―その問いを実践を通して探ります。
アディ・スンドロ
インドネシア・ジャカルタ出身のスンドロは、現地で購入した「ゴレガン」と呼ばれる軽食が個人情報の記載された印刷物に包まれていた経験をきっかけに、プライバシーと公共空間の境界について考察するプロジェクトを展開してきました。今回の滞在では、日本とインドネシアにおけるプライバシー意識や廃棄物の扱いの違いにも注目し、地域の方々と関わりながら版画制作を通して、社会や文化に潜む課題を見つめ直します。
アティッタヤポーン・センポー
センポーが育ったタイのイサーン地方では、かつて昆虫が人々の暮らしと文化の一部でした。しかし急速な経済成長により生態系は変化し、在来種のバッタは姿を消しました。この状況を受け、彼女は「今の時代、バッタはどこで首つり自殺をするのか?」という問いから出発したアートプロジェクトを展開してきました。滞在制作では、虫を農地から自然と送り帰す津軽の伝統儀式「虫送り」と、昆虫食文化を異国の地で継承する日本のタイ移民労働者の記憶を手がかりにイサーンと日本の東北地方を繋ぐ実践を探求します。そして、この2つの地域のあいだに新たな対話を構築することを目指します。
サマンサ・クラーク
青森を巡り流れる水について深く理解するため、日本文化において水がどのような意味を持つかを調査します。また、シンプルで反復的な模様による、瞑想的かつ協働的なドローイングにも取り組みます。クラークによれば、これは小さな行為が繰り返され、共有されることで大きな意味や力を持つこと――まるで水滴が山を削り、小さな小川が深い峡谷を刻むように――を身体的に理解するための方法です。こうしたドローイング制作を多くの人々と共に実践し、忍耐強い協働の成果を体験できる、開かれた場を設ける予定です。
フライヤーはこちら
デザイン:本庄浩剛
Design: HONJO Hirotaka
会期:2025年11月14日(金)-11月29日(土)、10:00-18:00
※11月17日(月)のみ休館日
会場:協同組合タッケン美術展示館(青森市柳川1-1-5 JR青森駅東口ビル4F)
入場無料
参加アーティスト:前谷開、丹治りえ、アディ・スンドロ、アティッタヤポーン・センポー、サマンサ・クラーク