建築

八戸市美術館

西澤徹夫 浅子佳英 森純平

■映像内展示風景について
※01:00- 八戸市美術館開館記念「ギフト、ギフト、」展示風景
※01:07- 八戸市美術館開館記念「ギフト、ギフト、」浅田政志作品 展示風景
※06:38- 八戸市美術館開館記念「ギフト、ギフト、」田附勝作品 展示風景
※06:45- 八戸市美術館開館記念「ギフト、ギフト、」展示風景

■その他注釈
※04:13 岩﨑克也 1964年生まれ。建築家。日建設計・設計部長。
※08:35 「八戸市ブックセンター」の正式名称は「八戸ブックセンター」https://8book.jp/

建築家プロフィール

西澤徹夫

1974年京都府生まれ。2000年東京藝術大学大学院美術研究科建築専攻修了。青木淳建築計画事務所にて「青森県立美術館」、「ルイヴィトン銀座店」担当。2007年西澤徹夫建築事務所開設。主な作品に「東京国立近代美術館所蔵品ギャラリーリニューアル」(2012年)、「京都市京セラ美術館」(2019年)。「映画をめぐる美術──マルセル・ブロータースから始める」展(2014年)、「Re: play 1972/2015―「映像表現 ’72」展、再演」展(2015年)(以上東京国立近代美術館)、「今和次郎 採集講義」展(2009年、パナソニック汐留ミュージアム、青森県立美術館)、「シンコペーション:世紀の巨匠たちと現代アート」展(2019年、ポーラ美術館)、ほか展覧会会場デザイン多数。2020年京都建築賞、AACA最優秀賞、第62回毎日芸術賞、優秀建築選2020JIA日本建築大賞、2021年日本建築学会賞(作品)受賞。

浅子佳英

1972年兵庫県神戸市生まれ。建築家、編集者。2010年東浩紀とともにコンテクチュアズ(現ゲンロン)設立、2012年退社。2007年タカバンスタジオ設立。2021年出版機能を追加し株式会社PRINT AND BUILD創立。第一弾として『デザインの現在 コンテンポラリーデザイン・インタビューズ』(土田貴宏著)出版。建築作品に「gray」(2015年)など。主な論考に「コム・デ・ギャルソンのインテリアデザイン」『思想地図β Vol.1』(2010年)。共著に『レム・コールハースは何を変えたのか』(2014年)など。商業空間を通した都市のリサーチとデザインを得意とし、街中のショップをリサーチする「TOKYOインテリアツアー」、都市をリサーチした展覧会「TOKYOデザインテン」、公共空間のリサーチ「パブリック・トイレのゆくえ」(2017年~)の企画監修などを行う。

森純平

1985年マレーシア生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科建築専攻修了。在学時より建築から時間を考え続け、舞台美術、展示、まちづくりなど、状況を生み出す現場に身を置き続ける。2013年より千葉県松戸を拠点にアーティスト・イン・レジデンス「PARADISE AIR」を設立。世界のアーティストが街に滞在している。主な活動に遠野オフキャンパス(2015年~)、東京藝術大学美術学部建築科助教(2017年~)。「たいけん美じゅつ場VIVA」 設計/ディレクター(2019年~)。

建築概要

開館
2021年
設計
西澤徹夫建築事務所・タカバンスタジオ設計共同体
室名
ジャイアントルーム、ホワイトキューブ、ブラックキューブ、コレクションラボ、スタジオ、ギャラリー、会議室、ワークショップルーム、アトリエ、ティールーム、多目的室
敷地面積
6,732.14m²
建築面積
3,080.21m²
延床面積
4,586.42m²
階数
地上3階
最高高さ
19.12m
構造種別
鉄骨造

□ 主な外部仕上げ

外壁
押出成形セメント板、カラーガルバリウム鋼板

□ 主な内部仕上げ

ジャイアントルーム:短繊維補強コンクリート
ホワイトキューブ:オーク複合フローリング
スタジオ:単板積層フローリング
コレクションラボ・ブラックキューブ:ループパイルタイルカーペット
ジャイアントルーム・ホワイトキューブ:プラスターボード
スタジオ:ラワン合板
コレクションラボ・ブラックキューブ:プラスターボード

学芸員コラム

「人によって創られる美術館」

現在の八戸市美術館は全館建て替えを経て2021年に開館しました。

新しい八戸市美術館のコンセプトは「出会いと学びのアートファーム」です。アートを通した出会いが人を育み、人の成長がまちを創っていく。作品という「もの」だけでなく、プロジェクトや人の活動によって創り出される「こと」にも焦点をあて、未来に向けて「まちを耕す」ことを目指し、八戸市美術館は始動しました。

美術館外観 ©︎Daici Ano

全館建て替えでは、展示室や収蔵庫といった設備が整えられただけでなく、館のコンセプトに基づいた設計がなされました。館内の空間は大きく2種類に分けられ、ひとつはさまざまな活動を可能とする「ジャイアントルーム」、もうひとつはジャイアントルームを囲むように並ぶ、専門性の高い「個室群」です。ここでは、各室が具体的にどのように利用されているか、所感を交えながら一部紹介します。

館内で最も特徴的とされる「ジャイアントルーム」は、移動棚やカーテン、家具によって自在に場所をつくることができます。これまでには、開館記念「ギフト、ギフト、」ではパフォーマンスプロジェクトやトークイベント、企画展「持続するモノガタリ」ではあえて仕切りも何もない日や作品展示とともに茶会を開くなど、多様な活動を実施してきました。そんな活動の中、空間が分かれても互いの存在を感じる距離感がそこにはあり、直接の交流に加えて、自然と刺激を与え合う場にもなっています。プロジェクトを行っている傍らで、通りすがりに覗き込む人がいたり、コーヒーを飲みながら休憩している人がいたり。さまざまな目的をもった人が共存する空間そのものも、ジャイアントルームの特徴のひとつといえます。

ジャイアントルームで開催された作品展示とともに茶会を開く「茶会with静寂」

個室群のうち、メインの企画展示室である「ホワイトキューブ」は、天井高5mの白い壁に囲まれ、幅広いジャンルの作品展示が可能です。開館記念「ギフト、ギフト、」の現代美術を中心とした空間的な展示から一変し、企画展「持続するモノガタリ」では、館のコレクションである油彩画や水彩画、書など、壁面の使用を中心とした展示となっています。仮設壁による会場構成の変化も含め、今後も展覧会毎に雰囲気が大きく変わることが期待できます。

開館記念「ギフト、ギフト、」より江頭誠《おやすみのあと》2021 ©︎Daici Ano
企画展「持続するモノガタリ—語る・繋がる・育む 八戸市美術館コレクションから」展示風景

「コレクションラボ」は、グレーの壁に囲まれた約100㎡の展示室です。ホワイトキューブに比べて小規模な本室では、ラボという名のとおり、実験的な要素を取り入れたコレクション作品の展示を想定しています。

コレクションラボに隣接する「ブラックキューブ」は、映像作品のために暗転可能となっており、企画展「持続するモノガタリ」に関連したコレクション関係者のインタビューを収録した映像の上映や、学校連携プロジェクトで制作された作品展示を行いました。

「ギャラリー」は、主に市民が展示活動を行う室で、美術館の「マエニワ」に面した窓と、高さ3.5mの回転壁が設置されています。窓の内戸は開閉式となっており、展示によって外への視線と自然光を選択できるため、作品の見せ方の幅が広がります。今後、人やまちが変わっていく中で、ギャラリーでの展示も変容していくかもしれません。

ギャラリー2 ©︎Daici Ano

前述で紹介した他、遮音性・吸音性があり、天井が高い「スタジオ」、創作の機会を生む「ワークショップルーム」、楽屋や控室にもなる「会議室」などからなる個室群は、市民による展示から企画展まで、幅広い活用を実現させることができます。そしてこれらの個室群は、人の交流の場であるジャイアントルームを囲うように配置されています。

作品の展示だけでなく、人によって積極的に活用されるための設計がなされた八戸市美術館は、学芸員にとっても挑戦や模索の場であります。展示する側と観る側で構成されていた従来の美術館のような在り方に加え、人の交流が織りなす「こと」の創出によって、まちがどのように成長していけるのか。今後の活動に注目してもらえると嬉しいです。

平井 真里(ひらい まり)

八戸市美術館学芸員。青森県出身。東京都江戸東京博物館、人間国宝美術館、藤沢市藤澤浮世絵館での勤務を経て、2021年より現職。これまで担当した展覧会企画に「公益財団法人 松竹大谷図書館所蔵 3D浮世絵 歌舞伎組上燈籠の世界」(藤沢市藤澤浮世絵館、2018年)、「広重の竪絵東海道勢ぞろい」(藤沢市藤澤浮世絵館、2018年〜2019年)、「広重たちの情景 初代・二代・三代 —江戸から明治へ—」(藤沢市藤澤浮世絵館、2019年)、「江戸の楽しみ 浮世絵双六と七福神」(藤沢市藤澤浮世絵館、2019〜2020年)、「最強!?相模武士の物語と浮世絵」(藤沢市藤澤浮世絵館、2020年)、「持続するモノガタリ—語る・繋がる・育む 八戸市美術館コレクションから」(八戸市美術館、2022年)などがある。